【税理士試験6科目合格者が教えます】事例理論対策

税理士試験

近年の税理士試験では、事例理論の出題がかなり増えてきています。

推測ですが、実務に則していることと差がつきやすいので、どの科目でも採用されているのだと思います。

私は受験生時代、先に結論を書いて自己流の文章を作ろうとしましたが、考えるのに時間がかかってしまったり、ヘンテコな文章になったりと、うまく答案をまとめることができませんでした。

書く理論は分かるけど「どう書けばいいか分からない」と悩んでいる受験生に向けて、事例理論で得点が取れるようになる簡単な方法をご紹介します。

事例理論とは

税理士試験の理論の出題は、ベタ書き(個別)理論、応用理論、事例理論の3つに分けられます。

ベタ書き理論と応用理論については、こちらの記事で深掘りしていますので、見てみてください。

事例理論は、具体的な状況が与えられ、法令の根拠をもとに当てはめができるかどうかが問われます。

こんな問題です。

出典:国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/zeirishi.htm

・所得税法
令和4年度(第72回)税理士試験

問1 次の⑴及び⑵について説明しなさい。
(注1) 各所得及び所得控除の概要についての説明は要しない。
(注2) 租税条約に関する事項は考慮する必要はない。

⑴ 日本国籍を有しないAは、令和2年5月1日に日本に初めて入国し、現在まで引き続き日本国内に住所を有している。Aが令和4年12月31日まで引き続き日本に住所を有し、令和4年分の確定申告をする場合、所得税法上、Aは、居住者(非永住者以外の居住者)、居住者(非永住者)又は非居住者のいずれに該当するか、その理由も併せて説明しなさい。
 また、その場合のAの課税所得の範囲及び申告において適用される所得控除の種類について説明しなさい。
⑵ 日本国籍を有しないBは、内国法人C社に15年間勤務していたが、令和3年12月に5年間の予定でC社の海外支店に勤務となり、納税管理人を定めて出国した。Bは、日本勤務中に住んでいた自宅を令和4年1月からC社へ社宅として賃貸し、C社から賃貸料を得ている。
 この場合、Bの令和4年分の確定申告等について、以下の①~③の事項をそれぞれ説明しなさい。
 なお、Bは、出国後、日本国内に住所及び居所を有しておらず、国内に親族や上記自宅以外の資産を有していない。
① Bは、居住者(非永住者以外の居住者)、居住者(非永住者)又は非居住者のいずれに該当するか、その理由も併せて説明しなさい。
② Bが得る賃貸料について、課税方法を説明しなさい。
③ Bの申告において適用される所得控除の種類について説明しなさい。

・法人税法
令和6年度(第74回)税理士試験

問2
 製造業を営む内国法人であるV株式会社(年1回3月末決算法人。清算中の法人ではない。以下「V社」という。)は、当期(令和6年4月1日~令和7年3月31日)中に発生した台風による土砂崩れの影響でその保有する工場が被害を受け、工場に保管していた商品Wが著しく損傷したほか、工場に設置していたⅤ社所有の機械装置Xの一部が破損し、車両Yが滅失した。この場合において、次の⑴~⑶の事実関係が生じたときのV社の当期における課税上の取扱いについて、その法的な理由を付してそれぞれ説明しなさい。なお、選択できる方法が複数ある場合には、課税所得金額の計算上、Ⅴ社に最も有利となる方法によること。
⑴ 著しい損傷により商品Wの価額がその帳簿価額を下回ることとなった。
⑵ 破損した機械装置Xの破損部分の機材の取替えに要する費用を当期において支出した。
⑶ 車両Y(滅失の直前の帳簿価額 6,000,000円)の滅失によって生じた損害は、V社が加入する車両保険の補償対象となっており、保険会社から保険金の額として8,000,000円の支払を受けることが当期中に確定し、当期中に支払を受けた。V社は、当該保険金を用いて、滅失した車両Yの代わりに車両Z(取得価額 10,000,000円)を翌期において新たに取得することとし、車両Yの滅失により支出する経費 500,000円を当期において支出した。なお、解答に当たって、車両Y又はZの減価償却費に係る事項については考慮する必要はない。

・相続税法
令和6年度(第74回)税理士試験

問1
次の[設例]に基づき、以下の[問]に答えなさい。
[設例]
 個人A(居住者)は、令和4年6月1日に、その配偶者B(居住者。個人Aとの婚姻期間は 25年)から、①国債(贈与時の時価 1,000万円)及び②配偶者Bが所有する宅地の上に存する家屋(贈与時の時価 1,500万円)の贈与を受け、その年中にその家屋を配偶者Bとともに居住の用に供した。個人Aは、令和4年分の贈与税の申告において贈与税の配偶者控除(相続税法第 21条の6)の適用を受け、適法に申告と納付を済ませている。なお、個人Aと配偶者Bとの間で家賃及び地代等の授受は行われていない。
 令和6年7月1日に配偶者Bは死亡した。遺産は現金 8,000万円及び上記の家屋(相続開始時の時価 1,000万円)の敷地の用に供している宅地(小規模宅地等の特例(租税特別措置法第 69条の4)の適用後の課税価格 9,000万円)であり、唯一の相続人である個人Aが取得した。
[問]
 個人Aの⑴令和4年分の贈与税の課税価格及び⑵配偶者Bの相続に係る相続税の課税価格について、関連する条文に触れつつ、それぞれ説明しなさい。
 なお、⑴の解答に当たっては、贈与税の配偶者控除の概要についても説明すること。また、⑴及び⑵の課税価格は、贈与税の基礎控除額又は相続税の遺産に係る基礎控除額の控除前の金額とし、配偶者居住権及び小規模宅地等の特例に関する事項並びに納税義務者の範囲については説明を要しない。

・消費税法
令和5年度(第73回)税理士試験

問2(※⑵⑶は割愛しています)
次の問に答えなさい。
⑴ 建設業を営む内国法人D社は、令和4年11月1日に資本金10,000,000円で設立された 3月末決算の株式会社であり、設立日から、国内における課税資産の譲渡等に係る事業を開始しているが、令和5年1月16日に、納税地を所轄する税務署長に対し、消費税の課税期間を三月ごとの期間に短縮することについての届出書(消費税課税期間特例選択届出書)を提出した。この場合において、D社の設立第1事業年度(令和4年11月1日から令和5年3月31日までの期間)の消費税の課税期間がどのようになるか、上記届出書の効力の生ずる時期に触れながら述べなさい。

事例理論に対するアプローチは、予備校や講師によって異なっているようです。

先に結論を書く派、先に条文を書く派、まずは概要を書く派など。

それだけ色々やり方があるということでしょうか。

魔法の言葉「したがって」

では、本題に入ります。

私がオススメする方法は、「条文+したがって」を先に書というものです。

色々と試行錯誤しましたが、この方法が1番再現性が高く、点数が取りやすいです。

先に条文を書く理由は3つあります。

条文を書けば加点が期待できる(条文を書いておけば減点されることはない)

税理士試験では、”法的な理由を付して”や”関連する条文に触れつつ”など、条文を暗記しているか(答案用紙に条文が書けているか)が問われます。

分かりきった問題であれば、結論から先に書くのがお手本の解答だと思いますが、結論に迷いが生じるような問題(ひと昔前の法人税のような判例からの出題)の場合、条文を書いているかどうかが合否に直結します。

また、何をどこまで書けばいいか分からないという場合も、とりあえず条文を書いておくことで、強引に「したがって」に繋げるというパワープレイが可能になります。

条文を書いておけば、何も書けなかったという最悪の状況を避けることもできます。

フォーマット化できる

自己流で答案を作成している場合や結論がすぐに出ない場合、頭で条文を思い浮かべながら答案を作成することになるので、書き始めてもすぐに手が止まってしまいます。

そこで、先に「条文+したがって」を書くと決めておけば、どんな問題が出ても同じ型にはめることができるので、考えることなく答案を書き始めることができます。

やることが決まっていれば、うまく文章がまとめられずに時間が過ぎてしまったということもなくなります。

試験本番の緊張を和らげることができる

受験経験者であれば、緊張や焦り、プレッシャーでいつものように落ち着いた状態で解答できないことは身に染みて分かっていると思います。

事例理論は複数の理論を書くことが多く、状況を把握しているうちに頭がこんがらがってしまうことも少なくありません。

先に条文を書き終えることで、とりあえず書けたという安心感から心を落ち着けることができ、もし頭が混乱してしまっても、目の前に条文が書いてあるのでそのまま事例に当てはめることができます。

このように、先に条文を書いておく方がメリットが大きいので、私はオススメしています

デメリット

この方法にもデメリットがあります。

採点者に優しくないかもしれない

結論から先に書く方が、読む側からすると分かりやすい答案になると思います。

予備校では結論から書くように指導していることが多いですよね。

結論から書いた答案の方が得点が高いのかは不明ですが、2時間しかない本試験において、初見の問題で完璧な答案を作成できる受験生はいません(そもそも正解が発表されていないので完璧を求めるのは不可能です)ので、結論が先が後かなど、気にしなくていいと思います。

それよりも、きちんと条文が書けていて、事例にあてはめることができ、結論を出していることをアピールする方が大事です。

ちなみに、「条文+したがって」の書き方は、自己流の文章ではないので、意外と読みやすいです。

書く条文を間違えるとアウト

よほど難しい問題でない限り、書く理論が分からないということはないと思いますが、少しズレた理論を書いてしまうことは考えられます。

答練や模試でも、見当違いの理論を書いて点数が取れなかった経験のある受験生も多いと思います。

これは事例理論に限らず、ベタ書き理論でも起こりうることなので、落ち着いて問題文を理解するしかありません。

本試験は普通の精神状態ではないので、問題文を読む前に一度深呼吸したり、2回~3回ゆっくり読むなどの癖をつけておきましょう。

実例

それでは、冒頭の過去問で実際に練習してみましょう。

まずは何も考えずに該当する条文をベタ書きします。
その後、段落を変えて「したがって」と書いた後に、事例の具体的な計算や金額、結論を書きます。

計算過程や結論については条文を真似するのが理想ですが、作文でも全然大丈夫です。

令和4年度(第72回)税理士試験 所得税法

問1 次の⑴及び⑵について説明しなさい。
(注1) 各所得及び所得控除の概要についての説明は要しない。
(注2) 租税条約に関する事項は考慮する必要はない。

⑴ 日本国籍を有しないAは、令和2年5月1日に日本に初めて入国し、現在まで引き続き日本国内に住所を有している。Aが令和4年12月31日まで引き続き日本に住所を有し、令和4年分の確定申告をする場合、所得税法上、Aは、居住者(非永住者以外の居住者)、居住者(非永住者)又は非居住者のいずれに該当するか、その理由も併せて説明しなさい。
 また、その場合のAの課税所得の範囲及び申告において適用される所得控除の種類について説明しなさい。
⑵ 日本国籍を有しないBは、内国法人C社に15年間勤務していたが、令和3年12月に5年間の予定でC社の海外支店に勤務となり、納税管理人を定めて出国した。Bは、日本勤務中に住んでいた自宅を令和4年1月からC社へ社宅として賃貸し、C社から賃貸料を得ている。
 この場合、Bの令和4年分の確定申告等について、以下の①~③の事項をそれぞれ説明しなさい。
 なお、Bは、出国後、日本国内に住所及び居所を有しておらず、国内に親族や上記自宅以外の資産を有していない。
① Bは、居住者(非永住者以外の居住者)、居住者(非永住者)又は非居住者のいずれに該当するか、その理由も併せて説明しなさい。
② Bが得る賃貸料について、課税方法を説明しなさい。
③ Bの申告において適用される所得控除の種類について説明しなさい。

【解答】
1.納税義務者
(1)内容
居住者及び非居住者は所得税を納める義務がある。
(2)納税義務者の種類
 個人は居住者と非居住者に区分され、居住者はさらに非永住者以外の居住者と非永住者に区分される。
①居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。
②非永住者とは、居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいう。
③非居住者とは、居住者以外の個人をいう。
 したがって、Aは国内に住所を有しているため居住者に該当し、Aは日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所を有していた期間が5年以内である個人であるため、非永住者に該当する。
2.課税所得の範囲
所得税は、次に掲げる者の区分に応じそれぞれに掲げる所得について課する。
(1)非永住者以外の居住者・・・すべての所得
(2)非永住者・・・国外源泉所得税(国外にある有価証券の譲渡により生ずる所得として一定のものを含む。)以外の所得及び国外源泉所得で国内において支払われ、又は送金されたもの
(3)非居住者・・・国内源泉所得
 したがって、Aは非永住者に該当するため、国外源泉所得(国外にある有価証券の譲渡により生ずる所得として一定のものを含む。)以外の所得及び国外源泉所得で国内において支払われ、又は送金されたものが課税所得となる。
3.所得控除の種類
Aは非永住者(居住者)である。
 したがって、下記すべての所得控除が適用される。
雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除

【解答】⑵ ①
1.納税義務者
(1)内容
居住者及び非居住者は所得税を納める義務がある。
(2)納税義務者の種類
 個人は居住者と非居住者に区分され、居住者はさらに非永住者以外の居住者と非永住者に区分される。
①居住者とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。
②非永住者とは、居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいう。
③非居住者とは、居住者以外の個人をいう。
 したがって、Bは、国内に住所及び居所を有していないため非居住者に該当する。

【解答】⑵ ②
1.課税所得の範囲
(1)非居住者・・・国内源泉所得
2.課税方法
(1)非居住者
①恒久的施設を有する非居住者
イ.恒久的施設に帰せられるべき所得、国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得等・・・原則として申告納税方式による総合課税の方法
ロ.利子等、配当等に係る所得(イに該当するものを除く。)・・・源泉分離課税の方法
 したがって、Bが得る賃貸料は、国内に所在している社宅(建物)に係るものであるため国内源泉所得に該当する。国内にある資産の運用により生ずる所得であるため、不動産所得として総合課税の方法により課税される。
※答案用紙が13行しかなかったため、理論を省略して解答しています。

【解答】⑵ ③
③ Bは非居住者である。
 したがって、所得控除については、雑損控除、寄附金控除、基礎控除のみが適用される。

令和6年度(第74回)税理士試験 法人税法

問2
 製造業を営む内国法人であるV株式会社(年1回3月末決算法人。清算中の法人ではない。以下「V社」という。)は、当期(令和6年4月1日~令和7年3月31日)中に発生した台風による土砂崩れの影響でその保有する工場が被害を受け、工場に保管していた商品Wが著しく損傷したほか、工場に設置していたⅤ社所有の機械装置Xの一部が破損し、車両Yが滅失した。この場合において、次の⑴~⑶の事実関係が生じたときのV社の当期における課税上の取扱いについて、その法的な理由を付してそれぞれ説明しなさい。なお、選択できる方法が複数ある場合には、課税所得金額の計算上、Ⅴ社に最も有利となる方法によること。
⑴ 著しい損傷により商品Wの価額がその帳簿価額を下回ることとなった。
⑵ 破損した機械装置Xの破損部分の機材の取替えに要する費用を当期において支出した。
⑶ 車両Y(滅失の直前の帳簿価額 6,000,000 円)の滅失によって生じた損害は、V社が加入する車両保険の補償対象となっており、保険会社から保険金の額として 8,000,000 円の支払を受けることが当期中に確定し、当期中に支払を受けた。V社は、当該保険金を用いて、滅失した車両Yの代わりに車両Z(取得価額 10,000,000 円)を翌期において新たに取得することとし、車両Yの滅失により支出する経費 500,000 円を当期において支出した。なお、解答に当たって、車両Y又はZの減価償却費に係る事項については考慮する必要はない。

【解答】
1.評価損
(1)災害等の場合
 内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷によりその資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったことその他一定の事実が生じた場合において、その資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の帳簿価額とその事業年度終了の時におけるその資産の価額との差額に達するまでの金額は、評価損計上禁止の規定にかかわらず、その事業年度の損金の額に算入する。
 したがって、V社の有する商品Wにつき、災害による著しい損傷によりその資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったため、その商品Wの評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の帳簿価額と当期末におけるその資産の価額との差額に達するまでの金額は、評価損計上禁止の規定にかかわらず、当期の損金の額に算入する。

【解答】
 1.損金の額
 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用でその事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額その他一定の額とする。
 したがって、破損した機械装置Xの破損部分の機材の取替えに要する費用は修繕費に該当するため、当期の損金の額に算入する。

【解答】
1.益金の額
 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲り受けその他の取引で資本等取引以外のものに係るその事業年度の収益の額とする。
2.損金の額
 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものその他一定の額とする。
3.特別勘定
(1)損金算入
 内国法人(清算中のものを除く。)が、次の要件を満たす場合において、繰入限度額以下の金額をその事業年度の確定した決算において特別勘定を設ける方法(決算確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法を含む。)により経理したときは、その経理した金額は、その事業年度の損金の額に算入する。
①固定資産の滅失又は損壊により保険金等の支払を受けること。
②取得指定期間内に保険金等をもって代替資産の取得(所有権移転外リース取引による取得を除く。)等をする見込みであること。
(2)繰入限度額
保険差益金の額×代替資産の取得等に充てようとする保険金等の額(分母の金額を限度)/(保険金等の額-滅失経費の額)
 したがって、V社が当期に支払を受けた保険金の額8,000,000円は当期の益金の額に算入され、車両Yの滅失直前の帳簿価額6,000,000円及び経費の額500,000円は当期の損金の額に算入される。
 また、V社は、車両Yの滅失により保険金の支払を受け、翌期に保険金をもって代替資産(車両Z)を取得する見込みであるため、繰入限度額1,500,000円を当期の確定した決算において特別勘定を設ける方法又は決算確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により経理したときは、その経理した1,500,000円は、当期の損金の額に算入する。

令和6年度(第74回)税理士試験 相続税法

問1
次の[設例]に基づき、以下の[問]に答えなさい。
[設例]
個人A(居住者)は、令和4年6月1日に、その配偶者B(居住者。個人Aとの婚姻期間は 25年)から、①国債(贈与時の時価 1,000万円)及び②配偶者Bが所有する宅地の上に存する家屋(贈与時の時価 1,500万円)の贈与を受け、その年中にその家屋を配偶者Bとともに居住の用に供した。個人Aは、令和4年分の贈与税の申告において贈与税の配偶者控除(相続税法第 21 条の6)の適用を受け、適法に申告と納付を済ませている。なお、個人Aと配偶者Bとの間で家賃及び地代等の授受は行われていない。
 令和6年7月1日に配偶者Bは死亡した。遺産は現金 8,000万円及び上記の家屋(相続開始時の時価 1,000万円)の敷地の用に供している宅地(小規模宅地等の特例(租税特別措置法第 69条の4)の適用後の課税価格 9,000万円)であり、唯一の相続人である個人Aが取得した。
[問]
 個人Aの⑴令和4年分の贈与税の課税価格及び⑵配偶者Bの相続に係る相続税の課税価格について、関連する条文に触れつつ、それぞれ説明しなさい。
 なお、⑴の解答に当たっては、贈与税の配偶者控除の概要についても説明すること。また、⑴及び⑵の課税価格は、贈与税の基礎控除額又は相続税の遺産に係る基礎控除額の控除前の金額とし、配偶者居住権及び小規模宅地等の特例に関する事項並びに納税義務者の範囲については説明を要しない。

【解答】⑴
1.課税財産の範囲・課税価格
 居住無制限納税義務者又は非居住無制限納税義務者に該当する者については、その者が贈与により取得した財産の全部に対し贈与税を課し、その年中において贈与により取得した財産の価額の合計額をもって、贈与税の課税価格とする。
2.贈与税の配偶者控除
 贈与により婚姻期間が20年以上である配偶者から居住用不動産(専ら居住の用に供する土地等又は家屋で法施行地にあるものをいう。)又は金銭を取得した者(その年の前年以前にその配偶者から取得した財産につきこの規定の適用を受けた者を除く。)が、その取得の日の属する年の翌年3月15日までにその居住用不動産をその者の居住の用に供し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みである場合又は同日までにその金銭をもって居住用不動産を取得して、これをその者の居住の用に供し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みである場合においては、その年分の贈与税については、課税価格から2,000万円(居住用不動産の価額と金銭のうち居住用不動産の取得に充てられた部分の金額との合計額が2,000万円に満たない場合には、その合計額)を控除する。
 したがって、個人Aが令和4年中に贈与により取得した国債1,000万円及び家屋1,500万円の合計額2,500万円が令和4年分の贈与税の課税価格に算入される。
 ただし、家屋は贈与税の配偶者控除の適用によりその価額1,500万円が令和4年分の課税価格から控除されるため、個人Aの令和4年分の贈与税の課税価格は、1,000万円となる。

【解答】⑵
1.課税財産の範囲・課税価格
 居住無制限納税義務者又は非居住無制限納税義務者に該当する者については、その者が相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し相続税を課し、その相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額をもって、相続税の課税価格とする。
2.生前贈与加算
 相続又は遺贈により財産を取得した者が相続開始前7年以内に被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、その贈与により取得した財産(その取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限り、特定贈与財産及び相続時精算課税適用財産を除く。)の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなす。
 ただし、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に開始した相続については、7年とあるのは3年とする。
3.特定贈与財産の意義
 特定贈与財産とは、贈与税の配偶者控除に規定する婚姻期間20年以上の配偶者に該当する被相続人からの贈与によりその被相続人の配偶者が取得した居住用不動産又は金銭で次に定める部分をいい、その特定贈与財産は相続税の計算上生前贈与加算されない。
(1)その贈与が相続開始の年の前年以前にされた場合で、その被相続人の配偶者がその贈与による取得の日の属する年分の贈与税につき贈与税の配偶者控除の規定の適用を受けているとき
・・・贈与税の配偶者控除の規定により控除された金額に相当する部分
 したがって、個人Aが配偶者Bから相続により取得した現金8,000万円及び宅地9,000万円の合計額1億7,000万円が相続税の課税価格に算入され、相続開始前3年以内に贈与により取得した国債1,000万円及び家屋1,500万円を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなす。ただし、家屋1,500万円は特定贈与財産に該当し、生前贈与加算されないため、配偶者Bの相続に係る相続税の課税価格は、1億8,000万円となる。

令和5年度(第73回)税理士試験 消費税法

問2(※⑵⑶は割愛しています)
次の問に答えなさい。
⑴ 建設業を営む内国法人D社は、令和4年11月1日に資本金 10,000,000円で設立された3月末決算の株式会社であり、設立日から、国内における課税資産の譲渡等に係る事業を開始しているが、令和5年1月16日に、納税地を所轄する税務署長に対し、消費税の課税期間を三月ごとの期間に短縮することについての届出書(消費税課税期間特例選択届出書)を提出した。この場合において、D社の設立第1事業年度(令和4年11月1日から令和5年3月31日までの期間)の消費税の課税期間がどのようになるか、上記届出書の効力の生ずる時期に触れながら述べなさい

【解答】
1.選択・変更の届出及び効力
 課税期間特例選択・変更届出書の効力は、その提出した日の属する3月ごとの期間又は1月ごとの期間の翌期間の初日以後に生ずるものとする。
 ただし、その提出した日の属する期間が事業を開始した日の属する期間その他の一定の期間である場合には、その期間の初日以後に届出の効力が生ずるものとする。
 この場合において、届出の効力が生ずるまでの期間を一の課税期間とみなす。
 したがって、D社は国内における課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する期間において3月ごとの期間に短縮することについての届出書(消費税課税期間特例選択届出書)を提出しているため、届出書の効力は令和4年11月1日から生じ、D社の設立第1事業年度の消費税の課税期間は、令和4年11月1日から令和5年1月31日及び令和5年2月1日から令和5年3月31日となる。

網羅性に欠ける部分はありますが、合格するには十分な答案になっていると思います。

答案作成のポイント

解答の際に注意してほしいところです。

答案用紙に収まるか確認する

この方法はいきなり理論を書き始めるため今から書こうとしている理論が答案用紙に収まるか、必ず確認してください。

答案用紙が足りない場合は理論を削る必要がありますし、逆に余るようであれば何かを見落としているかもしれません。(普通に余るだけのことが多いですが…)

理論が収まらないときは、解答に直接影響のない部分については省略する(書かない)、もしくは「一定の○○」や「その他」を使って逃げておきましょう。

文章を整える

「したがって」の他に、「また」「ただし」「なお」「該当する」は文章を作成する際に非常に便利ですので、覚えておきましょう。

「したがって股長い(またながい)」のゴロ合わせでいけます。

上記の解答例にも一部使われていますので、改めて確認してみてください。

形式面についても、同じ文章であれば点数は変わらないはずですが、見やすい文章を書くに越したことはないですので、綺麗に見える方法をご紹介します。

  • 段落の最初は1文字程度空ける
  • 「したがって」で段落を変える
  • 解答の番号は1→(1)→①→イ→・・・の順で細かくなるように統一しておく
  • ひらがなは漢字よりも小さく書く

個人的にはあまり気にしなくていいと思っていますが、これくらいはやっていました。

概要は書くべきか?

最初に概要を書くように指導して予備校もあるようですが上記の解答例からも分かるように、私は概要を書いたことは一度もありません。

概要を書くのに頭を使いますし、時間もかかるので、いきなり条文を書き始めていました。

概要を書けば加点要素になるかもしれませんが、私のように概要を一切書かなくても合格していますので、概要の重要度はそこまで高くないと思われます。

概要をどう書こうか考えている時間で、他の問題を解いた方が得点効率が良いというのが私の考えです。

おわりに

本試験の事例理論について、すべてこの方法で合格していますので、税理士試験において(少なくとも国税4科目については)得点が期待できるやり方だと思います。

過去問などで「したがって」以下の文章を作成する練習をしておくと、本番でもある程度スラスラ書けるようになるはずです。

理論暗記ができている受験生にとっては、事例理論はベタ書き理論+αくらいの難易度になりますので、取り入れてみてはいかがでしょうか。

ししまる
ししまる

ご武運を!

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