マンションの敷地利用権が複数ある場合の評価乖離率はどう計算する?

税務会計

*この記事は、2025年4月1日現在の法令等に基づいて作成されています。

令和6年(2024年)1月1日以後に相続税等により取得した居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)の評価にあたっては、個別通達により時価との調整が図られる(基本的に評価が上がる)ことになりました。

具体的には、マンションの築年数や総階数、所在階などから区分所有補正率を求め、これを従来の評価額に乗じたものが評価額となります。

この区分所有補正率を求める過程で、評価乖離率を計算する必要があります。

今回は、この評価乖離率の計算にあたり、敷地利用権が複数にまたがる場合に「⑥敷地の面積」をどのように考えるのか、解説したいと思います。

実例

A棟、B棟、C棟、D棟の4つの棟から構成されているマンションのA棟の201号室を所有している。

謄本を取得したところ、その専有部分に係る敷地利用権がA棟~D棟の各棟に及んでいた。

結論

居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書の「⑥敷地の面積」に記載する面積は、A棟の敷地面積ではなく、A棟~D棟の各棟合計の敷地面積となります。

理由

国税庁は見解を示していませんので、納税者側で検討する必要があります。

「居住用の区分所有財産の評価に関するQ&A」について(情報)
問5 4(2)(注1)に次の記載があります。

一棟の区分所有建物の敷地の面積は、原則として、利用の単位となっている1区画の宅地(評価単位)の地積によることとなります。ただし、例えば、分譲マンションに係る登記簿上の敷地の面積のうちに、私道の用に供されている宅地(歩道上空地などを含みます。)があった場合でも、その宅地の面積を含んだ登記簿上の敷地の面積によることとしても差し支えありません。

上記ただし書きの趣旨は、居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)の趣旨について(情報)
3 用語の意義等
(3) 一室の区分所有権等に係る敷地利用権の面積
(注1)に記載されていました。

上記2に掲げる算式により求めた評価乖離率に基づき評価することとした理由の一つが、申告納税制度の下で納税者の負担を考慮したものであるから、同様の趣旨により、納税者自身で容易に把握可能な登記簿上の敷地の面積によることとしても差し支えない。

つまり、「納税者の事務負担を考慮して作った計算式だから、簡単に分かる登記簿上の面積で問題ないよ」ということです。

各棟それぞれ評価乖離率を計算したら超面倒ですからね。

なお、通達とは直接関係ありませんが、この敷地利用権の評価の際に気になったので建築業者に確認したところ、マンションを建築する際の法令等の要件は、A棟~D棟の4棟で満たしている(A棟単独では建築許可を取っていない)とのことでした。

この観点からしても、合計の面積で計算して問題なさそうです。

そう言えば、令和5年12月31日以前の相続等であれば、A棟~D棟の敷地をそれぞれ評価し、それぞれに敷地権割合を乗じた額の合計でしたね。(評価単位は4つでした。)

あまりないケースかもしれませんが、参考になれば幸いです。

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