(1) 目的
税理士試験は、税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的として行われます。
(3) 合格
合格基準点は各科目とも満点の60パ-セントです。
合格科目が会計学に属する科目2科目及び税法に属する科目3科目の合計5科目に達したとき合格者となります。
国税庁のHPや税理士試験受験案内に記載されている税理士試験の概要です。
これから税理士を目指そうと考えている方や、税理士試験の勉強を始めたばかりの受験生に向けて、
10年かけて6科目合格した税理士が、税理士試験の真髄を語ります。
相対試験
税理士試験を語る上で1番大切なことかもしれません。
「合格基準点は各科目とも満点の60パ-セントです。」
と公表されていますが、これを真に受けているうちは、どんなに勉強しても合格できないでしょう。
公にはされていませんが、
難易度の低い(易しい)年も難易度の高い(難しい)年も合格率がほとんど変わらないため、
想定された合格率(10%~15%)になるように点数が調整されていることは、受験業界では常識となっています。
つまり、試験問題が難しければ40点でも合格になり、反対に試験問題が易しければ70点でも不合格になります。
税理士試験の前に多くの方が受けている日商簿記2級と3級は、
70点で合格できる絶対評価の試験になりますので、
難易度の低い回は合格率が高く、難易度の高い回は合格率が低くなります。
相対評価で採点されていることがほぼ明らなのに、
なぜ「合格基準点は各科目とも満点の60パ-セントです。」と表記されているのかというと
それは単に”税理士法に定められているから”という理由だけでしょう。
(試験科目の一部の免除等)
税理士法第七条
税理士試験において試験科目のうちの一部の科目について政令で定める基準以上の成績を得た者に対しては、その申請により、その後に行われる税理士試験において当該科目の試験を免除する。
(試験科目の一部の免除の基準)
税理士法施行令第六条
法第七条第一項から第三項まで及び第十一条第二項に規定する政令で定める基準は、満点の六十パーセントとする。
法律で定められている以上、
「合格者の基準は満点の60パーセント以上」を”形式的”に守らないといけないため、
点数を調整するしか方法がないのだと思います。
では、どのように相対評価が行われているかというと、
簡単な(受験生の正答率が高い)問題の配点を高く、難しい(受験生の正答率が低い)問題の配点を低くしています。
予備校では、
と分けて説明されることが多いと思いますが、
相対評価の税理士試験では、どの科目でも
「Aランクをほとんど正解し、Bランクを6割~7割正解する」ことが求められます。
予備校での答練(総合問題)の点数は絶対評価で行われるため、すべてのランクに同じように配点がありますが、
相対評価の本試験は、Aランクは配点が高く、Bランクには普通の配点があり、Cランクは配点が低い(配点がない)ということです。
なお、簿財の試験は、難易度が低い年の合格率が高い傾向にある(30%を超える年もある)ため、絶対評価が採用されている可能性も考えられます。
いずれにしても、簡単な問題を落とさないようにするのが1番の対策になります。
取捨選択を間違えると不合格になる試験
税理士試験は、基本的に2時間では終わらない量の問題が出てきます。
これは、受験生に限らず予備校の講師に解かせても2時間では終わらない量です。
つまり、物理的に全ての問題を解くことができないため、解答する問題と解答しない問題(捨てる問題)が必ず出てくることになります。
上述の通り、相対評価の試験ではAランクから優先的に解答する必要があるため、
でないといけません。
取捨選択を完璧にできる必要はありませんが、Cランクを解いてしまうと不合格になるということは肝に銘じておきましょう。
日本語能力検定試験
2時間では終わらない分量のくせに、問題文をきちんと読まないと合格できないのが税理士試験です。
このような指示を見逃して、正解できたはずの問題で得点できなかった受験生は山ほどいると思います。
さらに、本試験では緊張と焦りで、
- 「定額法」と「定率法」を読み間違えたり
- 届出書が出ていることを見逃したり
- 事業年度を勘違いしたり
と散々な目に遭います。
日本語を読めない人は税理士にはなれませんよ。という試験委員からのメッセージだと思いますが、
たったひとつの読み間違いで、また来年
ということがザラにある試験ですので、普段から日本語を一字一句読む癖をつけておく必要があります。
5科目合格する頃には、メールや契約書の誤字脱字にすぐに気づけるくらい、日本語に敏感になりますよ。
理不尽に耐えられるかの試験
模範解答が分からず、試験の採点がブラックボックスな時点でそもそも理不尽な気がしますが、私が経験した税理士試験の理不尽さをご紹介します。
また、通っていた予備校では習わなかったが、他の予備校では習っていた、というようなことも起こります。
1年かけて必死に積み上げてきたものが、たった2時間で噓のように崩れ落ちます。
それでも、気持ちを切り替えて来年の試験に挑むことを求められるのが、税理士試験です。
モチベーションを保てない試験
税理士試験の勉強を始めた受験生が100人いたら、半分は試験会場に来ません。
1科目だけでも勉強に相当な時間を費やす試験です。
その出題範囲と難易度に、半分の受験生がやる気を失い脱落してしまいます。
税理士試験は、モチベーションとの戦いです。
このようなモチベーションの低下に、抗い続けなければなりません。
また、税理士試験は1年に1回しかありませんので、不合格の場合、同じ勉強をもう1年続けることになります。
”心が折れても、再び立ち上がる”ということを1年の間に何度も繰り返すのが税理士試験です。
人生の一部を捧げる必要がある試験
冒頭でもお伝えした通り、私は税理士試験合格までに10年かかりました。
平均的な受験生として、人生の一部を捧げた(犠牲にした)という自覚があります。
人生100年とすると、10分の1は税理士試験の勉強をしていたことになりますからね。
合格するためには、膨大な時間を勉強に充てることが必要です。
目安としては、予備校で説明されている勉強時間の3倍くらいでしょうか。
基本的には1年中勉強ですし、長期休みもある程度は勉強せざるを得ません。
特に、ゴールデンウイークから本試験までは、平日の仕事終わりと土日祝は全て勉強というスケジュールになり、体力・気力ともに限界を迎えます。
税理士試験は、時間的にも、肉体的にも、精神的にも、人生の一部を捧げる試験です。
終わりに
あんたホントに試験受けたのか?と思うようなネットの情報が散見されるので、
ここはガツンと”経験者は語る”的なものを書いて生の声を届けよう思いましたが、
結果として”税理士試験あるある”になってしまった感は否めません。
また、税理士試験を検討している方には、ネガティブな印象を与えてしまったかもしれません。
誤解のないようにお伝えしておきますが、
1年間きちんと勉強を継続し、相対試験であることを理解し、試験当日に取捨選択を間違えなければ、普通に合格できる試験でもあります。
私自身、税理士試験のことをよく理解しないまま受験を続けてしまいました。
一人でも多くの受験生に、税理士試験の実態を把握してから挑戦してほしいというのが、ささやかな願いです。